フランス料理と聞くとナイフとフォークで食べる優雅なイメージがありますが、16世紀ごろまでのヨーロッパではほとんどが手づかみで食べていたそうです。イタリアでもパスタを手づかみで食べる画が残されており、16世紀に来日したイエズス会の宣教師は、日本人が大人も子供も箸を使って食べている様子を見て驚いたと記述しています。
テーブルマナーの原型は、イタリアメディチ家のカトリーヌ・ド・メディチがフランス王アンリ2世と婚姻したことにより、フランスにもたらされたと言われています。ナイフ、フォーク、スプーンも同様に、カトリーヌと、メディチ家の料理人によりフランスにもたらされ、テーブルセッティングが誕生しました。フランス料理など様々な料理の発展とともに、料理をおいしく味わうためにいろいろなカトラリーが工夫・研究され現在に至ります。

ナイフ
12世紀ごろ、カトラリーの中で最も早くナイフがテーブルの上にに登場してきました。ただし個人用としてではなく、大きな肉を切り分けるためのナイフがテーブルの上に1本だけ用意されていたようです。その後、個人用としてナイフを使うようになりましたが、各々が身に着けていた護身用のナイフで、調理された肉を好みの大きさに切り取って食べていたようです。
食べやすい大きさに調理される日本料理とは違い、大きなポーションで出されるヨーロッパの食文化の違いはここから来ているようです。
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フォーク
今ではどの家庭にもあるフォークですが、中世ヨーロッパでは、手で食べることが常識でした。というのも食べ物は神様からの授かりものであり、手を使って食べるのが正しく、道具を使う方が摂理に反するとされていたためと言われています。
フォークは11世紀ごろには原型ができていたようですが、当時は二股であり上手く使いこなせず、なかなか浸透しませんでした。貴族が気取ってフォークを使って食べる姿は、庶民の嘲笑の対象にもなっていたようです。
一般的に使用されるようになるのは、やはりパスタを食べるイタリアの方からで、16世紀に入ったころとされています。イギリスの方では18世紀になるまでフォークが普及しなかったようで、各国の広がりにも差があったようです。
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スプーン
スプーンの歴史は古く、ヨーロッパでは貝や石、骨を削ったスプーンが新石器時代の遺跡から発掘されています。フランス語のスプーンを表すCuillerは貝殻の意味もあり、各国のスプーンの語源でも貝やかたつむりなどから来ているものが多いのはこのためだとされています。
古代ギリシャ・ローマ時代には薬品の調合や儀式用としてスプーンが使われていました。キリスト教では子供が生まれると洗礼を受けさせますが、その時にスプーンを贈る習慣があります。スプーンは使う材質により価格差があったため、裕福な家庭では銀のスプーンが贈られました。このことから銀の匙をもって生まれた子は幸福になれるという言い伝えが出来たとされています。
食卓でスープを飲むための道具として使われ始めたのは14〜15世紀のことですが、当時は上流階級に限られていました。その頃スプーンはとても高価なものであり、富裕層ではその潤沢な財力を表すために、金や銀などの高価な素材でできたスプーンを愛用していました。一般に普及したのは、17〜18世紀ごろと言われています。
日本では、江戸時代に将軍や大名の侍医がスプーン(匙)を使って薬の量を図ることから、医者が患者を見放すことを「匙を投げる」と言うようになりました。
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「ナイフ、フォーク、スプーン」と言っても、その用途やサイズ、形状により数多くのアイテムが存在します。名称、形状、サイズには各メーカーで多少の違いがあり、また素材や柄のデザインも各メーカーでそれぞれ特徴があり、選ぶ楽しみがあります。