歴史上の著名な人物からの評判を得て、
今日では世界各国の大使館、公邸、一流ホテルやレストランなどで
広く愛用され、銀製品の代名詞として知られている、
フランスのシルバーウェアの老舗であるクリストフルをご紹介します。

貴金属の工芸品を制作する小さな工場を営む両親の元に育ったシャルル・クリストフルは、15歳の時に義兄の経営する宝石商の見習いとして働き始めます。10年後には義兄より宝石ビジネスを引き継ぎ、1830年頃にはフランスでもっとも有力な宝石商として頭角を現します。50人以上の従業員をもつ規模に成長したシャルルの会社では宝石や、金属製品、銀細工などの製作を行っていました。

この頃、イギリスで起こった産業革命の波がようやくフランスへも到来し、同時にブルジョワジー（中産階級）が急激に増え始めます。芸術、科学、テクノロジーの進歩と社会の変化に鋭い観察力を持っていたシャルルは、ブルジョワジーのそれまで王侯貴族たちだけに許された上質で贅沢な生活に対する理想と期待を満たすべく商品の開発に成功します。

1842年、シャルルはイギリスの商人から電気メッキ技術の特許を買い取り、工業的な規模で真鍮と呼ばれる合金の表面に、金や銀のコーティングをほどこした装飾品の生産にとりかかります。シルバーと同じ美しさと輝きを有し、さらに製品となった時の価格は銀器より格段に安い銀製品の登場は、たちまち話題になりますが、銀細工界からは猛烈な反発にあい、また製品の利益を巡ってシャルルは多くの裁判で戦わなければなりませんでした。しかし、数々の障害をのり越え、1845年にはシャルルは自社のシルバーコーティング製品の商標登録を行います。

シャルルが力を注いだシルバーコーティングされたダイニングウエアーは、それまで一部の王侯貴族だけが使ってきた純銀製品を、各家にダイニングルームを持つようになったブルジョワジーの間で急速に普及させ、木製のカトラリーを使用していた庶民にも銀製品を使用する機会を与えることに貢献します。

クリストフルの製品の評判は瞬く間に広まり、1846年には時のフランス王 ルイ・フィリップが、ノルマンディー城の私邸用にテーブルウエアをオーダーし、同社はオルレアンファミリーの御用達用となります。続く1851年にはナポレオン三世がチユイルリー宮殿のための食器セットを注文、同年、ロンドンで開催された万博において、その後長く続く数々の受賞の中で最初の賞となるメダルを受賞。わずか数年の間でクリストフルはシルバーウエアの代名詞に例えられる一流ブランドとしての地位を確立することに成功します。

クリストフルは創業より180年以上にわたり「創意・伝統・品質」を理念とし、創業者シャルル・クリストフルのモットーである“唯一の品質、それは最高の品質”を忠実に 守り続け、「食卓の芸術品」として今も世界中の人々を魅了しています。

クリストフルのシルバーコーティングの厚さは40ミクロンあります。これは日本で一般的なメッキの厚さと比べると10倍以上の数字にもなります。このメッキの厚さこそが3世代に亘って使用することができるといわれる理由です。また、このメッキの厚さによりカトラリーの表面に様々な紋様の装飾を施すことができるのです。

彫り込まれた半球の珠がまるで真珠のネックレスがカトラリーの輪郭を縁取っているように見えるルイ16世様式デザインです。

ルイ14世のパリの近郊にあったマルリー城にちなんで名づけられました。ルイ15世様式もしくはロカイユ様式の典型的なデザイン。植物の装 飾性の高い浮彫が特徴のデザインです。

対象的に配置されたリボンが柄の部分で豊に結ばれたルイ16世様式のデザイン。食卓を楽しく演出します。

ナポレオン1世とその皇妃ジョセフィーヌが好んだパリ近郊の居城マルメゾン城にちなんで名づけられました。棕櫚の葉、蓮の葉の左右対称の装飾は典型的なエンパイア様式と言えます。

一重の線で彫刻されたデザインは草花が生い茂る庭にインスピレーションを得て デザインされました。規則的で精緻な模様はバロックデザインを現代に再現しています。このデザインの製作には何年もの月日を要しました。過去のデザインの特徴を継承しつつも現代の食卓にあう洗練された印象の、マルセル・ワンダー氏によるクリストフルを代表する新しいデザインです。